羽生結弦 FS「Origin」2

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羽生結弦のこの上なく印象的な「手」については度々触れたが、FS「Origin」では最初のポーズから手のアウラがとりわけ鮮烈だった。羽生結弦の美しさはもちろん手だけにあるのではなく全身、全ての動き、アウラの及ぶ全ての空間、そして観る者の精神の領域まで到達していると承知のうえで、今回は、フィギュアスケート世界選手権でこの目で観た彼の「手」にこだわってみる。

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手の表現力はプルシェンコとウィアーの特徴でもあるが、筆者はどういうわけか、プルシェンコの手が最も印象的だったシーンを思い出した。それはソチ五輪 団体戦金メダリストの栄光に輝いていた彼がSPの直前練習の後、観客の前で自ら棄権を告げた場面。事実上、羽生結弦への王座継承となった瞬間である。あのとき、演技不能な負傷(人工椎間板の剥離)による激痛を抱えながら、堂々たる姿勢を保ち、観客をなおも魅了しながら進み出ることができたのは、あの手の力だったのかも知れない。現役末期には積年の傷と治療で深刻な状態にあったプルシェンコにとって、風を捉えて味方につける「手」がが非常に重要だったに違いない。

今回、手に溢れるオーラが以前にも増して際立つ羽生結弦も、実は相当な痛みを抱えているのでは?負傷から完全には回復できてないのでは? だとしたら、ファーストジャンプの4Loは極めて危険だ。そんな不安が一瞬、一ファンの脳裏を過ぎった。4Loジャンプの完全成功で余計な杞憂だったと安堵したが、続く4Sの乱れには、大会後に発表された通りロステレコム杯から完治することなく継続していた症状が関係していたのかもしれない。

「Origin」の羽生結弦の手はしかし、そうした困難を超越して、あの瞬間のプルシェンコの両手に呼応し、時空を超えて繋がれていた。両手を天に向けて仰ぐ美しい手は彼自身の情熱の象徴であり、普遍的な希望を表現していたことは確かだが、彼自身の原点である、あの瞬間のプルシェンコの手に捧げられていると、筆者は感じた。

闘いを終えて結果も確定したが、今大会の羽生の闘い方は、平昌五輪のときとは違っていた。羽生が目指した完璧な演技とは、難易度を下げて完成度を上げることではなく、演技全体のクオリティを上げたうえで、単独4Loジャンプ、そして彼にしかできない4T+3Aのコンビネーションジャンプを加点付きで成功させることだったと思われる。リスクを回避せずに果敢に攻めたプログラムを滑りきった今季は、羽生結弦にとって、源点を見つめ直すと共に未来への挑戦の意思を示す転機のシーズンとなった。

一ファンの勝手な予測に過ぎないが、来季の彼のプログラムは、恐らくFSにも単独3Aを組み込む構成から始まるだろう。シーズン中に4Aに進化を遂げる歴史的瞬間を迎えるかも知れない。その前にまずは怪我を完治させて、痛みのない状態でスケートを楽しめるようになって欲しい。

「プルシェンコの手」

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