羽生結弦、内なるスワンの飛翔。金メダルおめでとう!!

確信していた通り、羽生結弦平昌オリンピック フィギュアスケート 男子シングル競技の金メダルに輝いた。SP、FSともに負傷から長いブランクを経て復帰した現時点で最高の力を発揮して、素晴らしい演技を見せてくれた。4回転はリスクの高いルッツも可能性のあるループも回避して、サルコウとトウループを満点のGoe加点が付く出来で仕上げるという正しい判断。ほとんどのエレメントに2点、3点の加点が付くクオリティの高いパフォーマンスで世界中を魅了した。シニアデビューしたばかりの頃から応援している筆者にとっても嬉しい限りである。

エキシビションでは昨シーズンに引き続き、サン=サーンスの「白鳥」を現代風にカバーしたIl Voloの「Notte Stellata」で滑る美しいプログラムを見せてくれる。彼が秘め持つ美の本質が開示され、筆者の研究テーマでもあるクロスジェンダー・パフォーマンスに通じる至高のスワンがまた舞い降りるのが楽しみだ。

否、彼の内なるスワンはエキシビションを待たずに既にオリンピックのリンクに舞い降りていた。フローレスな演技で世界を沸かせたSPでは、格調高いショパンの「バラード第1番」で抽象性の高いテーマを表現しており、オリンピックのSPに相応しい作品に仕上がっていた。観る人の自由な解釈で演技者の本質を見つめることができる普遍性のあるプログラムであるが、筆者はこのSPで、彼の内なるスワンの存在を感じた。

迫力あるジャンプの着氷の美しさは野生の白鳥の湖水への着水を思わせ、指先まで魂のこもった手の動きは優雅で力強い翼のよう。そして、FS「SEIMEI」とは異なる雰囲気のシットスピンはまさにスワンのフォームである。タラソワのリクエストによるエキシビションのスワンはジョニー・ウィアートリノ・オリンピックで衝撃を与えた「The Swan」へのオマージュでもあることが覗えるが、SPの「バラード第1番」に潜むスワンは、羽生自身のスワンである。羽生のスワンは、至高の美しさ、優雅さ、高貴さを湛えながら、一種ワイルドで力強くエネルギーと情熱にあふれている。
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羽生結弦が今日金メダルを獲得したのは、もちろん彼自身の努力の結果であるが、神憑りしたような強さと美しさに、内なる神聖なスワンの存在を感じてしまった。彼の内なるスワンが守護天使のように彼に憑き、不思議な力を吹き込んでいるかのようである。スワンは羽生が以前から好んで取り上げていたモチーフであるが、ソチ・オリンピックのエキシビションでも、ウィアーのスワンを思わせる衣装を纏いながらも、東関東大震災の被災者そして乗り越えつつある者として、ウィアーの原型から進化したスワンを演じたことが記憶に新しい。そして、金メダルを2回のオリンピックで続いて勝ち取った彼のスワンは、これからもさらに美しく進化し変容していく。その瞬間瞬間を見逃さないように、応援していきたい。

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このシットスピンを「スワンスピン」と呼ぶことを提唱したい。

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羽生結弦くん、がんばって! 金メダルは君のもの

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