アダム・リッポンのフラミンゴがオリンピックのリンクで飛翔した。ノーミスに近い演技で、フィギュアスケート団体戦、男子シングルFSで3位、そして、アメリカチーム全体の健闘もあり、団体戦銅メダリストとなった。
Embed from Getty Images彼がFSプログラムに選んだ音楽「フラミンゴの飛来」は、動物自然環境ドキュメンタリー映画『The Crimson Wing: Mystery of the Flamingos』のサウンドトラック曲であるが、彼のフラミンゴはワイルドながらナチュラルとは言えない。ファンタジックでシュールな、架空の鳥のようである。
前の記事でも触れた通り、筆者の研究テーマの一つは、ジェンダーを超越した美の表現、クロスジェンダーパフォーマンスである。この研究テーマで論じた修士論文と小論文において、フィギュアスケートにおけるクロスジェンダーパフォーマンスの象徴として取り上げたのは、ウルマノフ、プルシェンコ、そしてジョニー・ウィアーらの歴史的プログラムのモチーフとなったスワン(白鳥)であった。
ウィアーのスワンの衝撃がいまだに記憶に鮮明なこの美の領域を体現している一人として、筆者はアダム・リッポンを応援している。そして、リッポンが自身の美の化身としてスワンではなく、フラミンゴを演じたことに、新しい時代の到来を感じていた。リッポンのアクロバティックな動き、柔軟性、多様性に満ちたハイレベルなスピン、そして彼の身体のシルエットそのものが、まさにフラミンゴに相応しい。独創的で、明るく快活でエネルギーに溢れ、そして未知の空を自由に飛翔するフラミンゴである。悲劇的な美しさに満ちたスワンとは異なる、新しいタイプのクロスジェンダーパフォーマンスの境地がリッポンのフラミンゴの飛来をもって開かれたと言えるだろう。
リッポンのファンたちは、彼に4回転ジャンプの大技争いに参戦するより、優雅さな演技を期待しているようだが、彼は最高得点を獲得できる4回転ルッツの成功者でもある。転倒という結果であったが、全米選手権ではこのFSにも組み込んでいた。今回のオリンピック団体戦では回避しており、個人戦でも敢えて封印することも正しい選択と言えるだろう。そして、4回転ルッツを封印したとしても、或いは転倒したとしても、彼に銅メダルを狙える実力があることは最近の戦績が示す通りである。リッポンの独創的なフラミンゴは、より美しく力強く、そして高く遠くへ飛翔していく可能性を秘めているのである。
Adam Rippon’s creative Flamingo opened the new era of figure skating cross-gender performance.
平昌オリンピック開幕 ―フィギュアスケート男子シングルにおけるクロスジェンダー・パフォーマンスの行方は?
Expecting Cross-Gender Performance of Men’s Single Figure Skating in PyoengChang
Yuzuru Hanyu “Notte Stellata” ―”The Swan” is flying from Olympic rink.
Yuzuru Hanyu’s Olympic Demon and Control to the Gold Medal
Enchanted by his inner Swan ― Yuzuru Hanyu’s SP and his Gurardian Swan
Yuka Aihara, Gender-Crossing in Men’s Single Figure Stating ―Focused on Performances in Olympics in the Early 21st Century―, Nihon University, Graduate School of Social and Cultural Studies