羽生結弦「星降る夜(The Swan)」―オリンピックのリンクに至高のスワンが舞う 2

とうとう閉幕してしまった2018年平昌冬季オリンピック。フィギュアスケート限定、特に男子シングルという偏った観戦ながら今回もたっぷりと楽しませていただきました。勝ち抜いた上位選手だけが出演できるエキシビションでは、競技とは違うリラックスした雰囲気が漂い、アーティスト、そしてエンターティナーの素顔が見られ嬉しくなりました。 一番印象的だったのは、練習中から仲間たちと楽しいひとときを過ごし、純粋にスケートを愛し楽しむ羽生結弦さんの笑顔。そして、とうとうオリンピックのリンクに舞い降りた「Notte Stellata(星降る夜)」のスワン。熾烈な4回転ジャンプ対決が繰り広げられた昨シーズン、まるでそのアンチテーゼのようにエキシビションで滑ったスワンが、オリンピックのリンクでも魅了してくれました。 この曲、この衣装のスワンには個人的に色々と思い入れがあり、金メダリストのガラ・プログラムとしてオリンピックで披露される日を夢見ていたのですが、その夢が実現しスワンレイクのイリュージョンで演出されたリンクに彼のスワンが登場したときに思ったことはただ一つ。 Advertisements

真央に捧ぐオマージュ ―平昌オリンピックにおける浅田真央の存在感

浅田真央は公式には平昌オリンピックに全く関与していない。引退したかつてのメダリストがオリンピックで解説者やレポーターとして活躍するのはよくあることだが、オリンピック関連のテレビ番組に現在の浅田真央がテレビに登場することはない。その理由について詮索することは控えるが、彼女の不在はあまり問題でない。いまやどんな競技会でも彼女の存在感をたっぷりと感じ取ることができるのだから。 平昌オリンピックのリンクで繰り広げられるフィギュアスケート競技を観戦しながら、浅田真央の美意識やアスリート魂が多くの選手たちに受け継がれていると感じた。偶然の一致かも知れないが、浅田真央へのオマージュと解釈できる要素を含んだ演技が多々見られるのである。

羽生結弦と「オリンピックの魔物」

平昌オリンピック、フィギュアスケート男子シングル、FS(フリー)演技を終え、羽生結弦は「感謝の気持ち」を込めて自分の右脚に触れた。 2017年11月、グランプリファイナルの練習中に4回転ルッツで転倒し、右首を負傷。その後全ての試合に欠場し、長いブランクを経てのオリンピック出場となった。結果は既に世界中で知られる通り、SP(ショート)でノーミスの演技を披露し自らの世界最高得点に迫る111.68点を獲得してリードし、FSでも200点を上回るスコアを叩き出し、金メダルに輝いた。 逆境に打ち克つメンタルの強さ、努力と忍耐、卓越した運動能力、天性のセンスと芸術性、フィギュアスケートへの愛、そして勝利への情熱。金メダルに導いた羽生の美点が際限なく思い浮かぶ。そして、今回はそれらに加え、計算されたコントロール、判断力といった理知的な要素も挙げられるだろう。高得点ではあるが自らの最高得点を更新しての勝利ではなく、FSにおいてはネイサン・チェンに次ぐスコア、技術点においては宇野が僅かに上回っていた。そしてレベル3判定のエレメントも含む、完全ではないスコアに、持てる力をバランス良く発揮するための優れたたコントロール能力、根性や底力だけではない、精神的、理知的なアスリート魂を感じた。

羽生結弦くん、がんばって! 金メダルは君のもの!

4年間待ちに待った、冬季オリンピック、フィギュアスケート男子シングル個人戦が今日開催される。SPは午前中から開始という気の毒なスケジュールだが、全員の演技を堪能したい。 応援するのは、羽生結弦。彼が15歳のときから一途に応援し、成長を見守ってきたのだから。4回転ルッツ回避も、団体戦不出場も正しい判断。今日のこの日に最高の演技を見せて欲しい。 今日のSP「バラード第1番ト短調」(作曲:フレデリック・ショパン)も正しい選曲。振付は、ソチのSPと同様、ジェフリー・バトル。4回転ループをはじめ、すべてのジャンプの成功を祈っているが、瞬間瞬間の至高の輝きを見逃さないようにしたいと思う。SPでは具体的なキャラクターを演じるのではなく、抽象的な曲で格調高く滑るのが望ましいというのが私の考えだが、このプログラムは羽生の美の本質、スワンでもある。指先まで魂のこもった所作の全てを堪能したい。特に、スワンスピンと命名したいシットスピン。ここでの手の動きはまさに白鳥の翼。ジョニー・ウィアーの系譜にあるスワンが息づいている(と私は解釈する)。

平昌オリンピック開幕 ―フィギュアスケート男子シングルにおけるクロスジェンダー・パフォーマンスの行方は?

2018年冬季オリンピックが開幕した。応援専門分野である男子シングルで特に注目している選手は、日本の3選手の他、アダム・リッポン(アメリカ)とミーシャ・ジー(ウズベキスタン)。いわゆる4回転ジャンパーではない彼らを選ぶのは何故? という疑問を抱かれることだろうが、それは私が「フィギュアスケート男子シングルにみるジェンダー・クロッシング」の論文筆者だから