ヨコハマ創造都市センターで開催中の「YCC Temporary 北澤潤 “ネイバーズ・ランド”」に惹き込まれ、すっかりリピーターとなってしまった。「世界のどこにも存在しない」けど、待望していた国「ネイバーズ・ランド」は、インドネシア、フィリピン、中国、インドなどに実在するお店をモデルにデザインされたシンプルで美しいブースが並ぶ、居心地のよい空間。学校の文化祭のようなアットホームな雰囲気もあり、気軽に足を運びたくなる。ナチュラルだがコンセプチュアルに構成された会場で、横浜在住の外国人「ネイバーズ」との出会いを通して、毎回新鮮な異文化体験を楽しめる。
横浜に住む「隣人」として交流が生まれることを意図したという、北澤潤氏による、展覧会のコンセプトは大当たりで、交流はその場限りかも知れないけれど、心が通い合った瞬間を体験することは大きな喜びとなる。例えば、鉄道オタク少年HALの場合。
世界で活躍する元日本車輌電車(特にインドネシア)を描くという「テツ」の中でもかなりマニアックな趣味の持ち主。ゴールデンウィーク後半のその日、ランドマークタワーで建築家の父が出展している別の展覧会を観た後、YCCが会場なのでたぶん建築つながりと思い込んだ母と一緒に、「ネイバーズ・ランド」に行くことになった。行ってみると実はあまり建築つながりではなかったが、それがHALには幸いした。
「ネイバーズ・ランド」にはインドネシアのブースもあり、インドネシア人のネイバーズさんに出会うことができたのだ。自作のKRLジャボタベック(ジャカルタ首都圏通勤電車網)の赤い電車(JR旧系)の絵を見せたら、とても喜んでもらえたのだ。いつも感心されるがマニアックすぎて引かれる…というパターンだったので、実際に乗ったことのある人たちに褒めてもらえて、少年HALは大喜び。電車大好きというAlvianさんをはじめインドネシアのネイバーズたちと楽しくお話できて、インドネシアのアーティスト服を来て記念撮影もできて感動もひとしおだった。母が少し通訳をしたが、横浜在住のネイバーズさんなので日本語もかなり通じる。また常駐のスタッフさんや日本語堪能な小学生さんがいるので、英語や各国の言葉に自信がなくてもコミュニケーションに支障はない。
すっかり気を良くした少年HALは、もっと沢山の人に見てもらいたいと、翌日も父が出展している建築家展の搬出の手伝いに行く前に「ネイバーズ・ランド」へ。初回の入国のときにパスポートを購入したら会期中フリーパスになるのも嬉しい。会場の規模が大きくないので、ネイバーズさんにもスタッフさんにも顔を覚えてもらえているのもまた嬉しい。この日はAivianさんと再会はできなかったけれど、インドネシアからの美人留学生 Cendikiaさんとの出会いが待っていた。さっそく前の日より沢山集めて持ってきた赤い電車の作品を見せると、自身も電車が大好きとのことで、日本人少年による旧日本車輌の現行インドネシア電車という珍しい絵に感激してくれた。Cendikiaさんは大学院で駅に関連する非常に有意義な研究をしているとのこと。鉄道ファンの女子というだけで貴重な存在なのに、ここでインドネシアから来た彼女にめぐり会えるとは!
それだけでも感動で胸がいっぱいのHALだったが、せっかくなのでインドネシア料理のワークショップに参加。ネイバーズさんたちに教わって、好物のナシゴレンを自分で調理した。「ネイバーズランド」では、各国の料理や手芸のワークショップが随時開催されており、自分の手で作り味わう体験をすることができる。ほぼマンツーマンで教わることができるので、美味しいもの、クオリティの高い作品をつくることができ、じっくり体験できたという満足感を実感できる。この日はあまりゆっくりできず名残惜しかったが、またきっとここで会えるという期待感をもって、「ネイバーズランド」展から建築家展へ。
少年HALのように、その国の人と交流したい、文化を実体験したいという願望を抱えながら機会がなかった人にとって、「ネイバーズランド」はまさに待望のスペース。具体的な願望はなくても、行けば素敵な体験ができる不思議な国。少年HALの話には続きがあるが、長くなったのでまた改めて。
会期はあとわずかなので、ぜひお見逃しなく。
YCC Temporary 北澤潤 “ネイバーズ・ランド”
会場:YCC ヨコハマ創造都市センター
会期:2018/4/27(金)〜6/10(日) 木・金・土・日曜・祝日のみ開場
http://yokohamacc.org/yct/junkitazawa/
[…] そして、この国のコンセプチュアルなアート空間は、非常に創造的でもある。横浜在住の外国人、ネイバーズとの出会いから生まれる体験はエキサイティングで 期待を裏切らない。そして、HAL(15)の事例の通り、それ以上のものが得られる。それはこのシンプルな空間の適度な余白でこそこそ生まれる奇跡なのかも知れない。そして予定した仕掛けや機能を超える体験を生み出す創造的な空間を生み出すことが建築の理想なのかも知れない。 […]
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